春の訪れが待ち遠しい日々ですが、皆様、いかがお過ごしですか?
先月から展覧会シーズンに突入しました。
そのスタートが京都です。2月の京都へは、確か10年以上前に三千院の初午大根炊きへ行ったのを最後に、一度も訪れたことがないように思います。
さぞや寒いだろうと予想はしていたものの・・・
2月8・9日、京都文化博物館別館ホールに於いて「第4回八仙花いけばな展」が開催されました。
八仙花とは、紫陽花の別名でもあります。8名のメンバーそれぞれの個性を活かした作品を、基本的には一年に一度、在籍するメンバーの地元地域で展覧会を開催するという取り組みをしています。
2019年に第一回展を神戸三宮神社で開催、次は私のお当番の年でしたが、コロナ禍となり、二年間開催を見合わせました。
そして、2022年、ちょうど大河ドラマで鎌倉殿が放映されていた年に、北鎌倉にある円覚寺塔頭龍隠庵の和尚様と懇意にさせていただいているご縁から、龍隠庵さまと松嶺院さまをお借りして、第二回展を開催しました。
そして、翌年には仙台メディアテークにて第3回展を、一年おいて本年第4回展の開催となりました。今回は京都ということもあり、第二の故郷の気分で京都の友人知人、そして三千院の皆様にもお知らせしました。
過去の八仙花のお知らせはこちら↓
前回の「家元のよみもの」でお話した 新年会 を終えるやいなや、ワクワクしながら準備をしていました。ところが、だんだん京都行きの日程の天候があやしくなってきて、ワクワクから急に心配なあまりのドキドキに変わっていきました。
不安は的中し、なんと、雪の予報です。
えー!車で花材も器も積んでドライブ気分で京都入りする予定だったのに、まさかの雪!
ギリギリまで車で行くつもりでいましたが、周囲の方からの心配の声に耳を傾けないわけにはいきません。次第に天候が崩れ始め、出発三日ほど前に断念、新幹線に変更せざるをえませんでした。いつもアクシデントに見舞われる私ですが、今回はかなりの予期せぬ事態に。
それから出発までの日々は急展開で、前日までに用意するはずの全てのものの発送する準備に取り掛かりました。
花材も東京で既に調達済みでしたが、それは帰浜した翌日の「いけばなインターナショナル東京支部展」に使うことにして、全て現地調達と決めました。
花器は、スノータイヤで確実に車で向かうというお仲間の先生にお預けできたことが何よりありがたいことでした。以前宅急便で送り、割れてしまった経験からどうしても花器だけは宅急便では送りたくないのです。
バタバタと準備は整ったものの、1番重要な花材が現地へ行くまでどうなるかわからない、きっと素敵な花材に出逢える!と信じてはいましたが、祈る思いで向かいました。
京都には、本当に信頼できる年下なのにお姉さんのような友人がいて、今回は滞在中、フル回転で私をフォローをしてくれました。
京都に着くとすぐさま、滞在のホテルへ、そして初日の着付けの美容室へ着物を届けてくれました。そして、一番重要な花材を調達するお花屋さんへと私を時間の無駄なく目的地へ連れて行ってくれました。
この方への感謝は言い表しようがありません!
そして・・・思わず「私を待っていてくれたの?」と言いたくなるような素敵な花材に出会えたのでした。
初めて伺うお店でしたが評判はきいていました。
お店に入るなり、大きな枝物が沢山あり、心浮き立ってしまいました。先ずは社長さんにご挨拶をして、いろいろと見せていただいているうちに、奥から素晴らしい照り葉の椿を出してきてくださいました。それには心から感動しました。
お店の中を一巡りして、枝ぶりの良さそうな山茱萸の束を見つけ、かなりの苔をまとい、少し赤く色づいた葉のついたこれまた素敵な枝ぶりのツツジ、敢えて葉が少し茶色がかった藪椿で一作まとまりました。
先ほどの照り葉には同系のまんさくと、社長さんのおすすめの柘榴で決まり!
今回も素敵な花材に出逢えたことに、感謝しました。
そして、翌日の生け込みは全て順調に、と書きたかったのですが・・・ここでまたアクシデントが勃発!けれども、前述の友人がフォローしてくれて、そして、どうにかクリア(笑)
さて、ここからが大変!
かなり本格的に夜から雪が降り出しました。
翌日は着物を着る予定・・・なんとしたことか。
朝には止んで、雪も溶けていることを祈りながら休みました。
翌朝・・・そぉっとカーテンを開けてみるとお外は真っ白!その瞬間、私の頭の中も真っ白に・・・
ご一緒している広山流のお家元と2人、着付けの美容室まで当然タクシーのつもりでいましたが、タクシーなど呼べず、地下鉄で美容室へ。
会場まではタクシーでと願いましたが、やはり捕まらず、待っていても仕方ないので、2人で地下鉄に乗り、雪道を着物姿で歩いてどうにか会場到着。
もうここまででヘロヘロです。
それでも、自分の作品に会うと元気が出ます。
寒くてなかなか花開けない山茱萸に、綺麗に咲いてね、と声をかけながらお水を差しました。
足元の悪い中、お運びくださるお客様にも感謝でした。
午後には三千院の御門主様もお出ましくださり、思いがけないことでしたので、とても嬉しいことでした。
初午大根炊きの初日のお忙しい中を、お運びくださり、丁寧に作品をご覧になって下さいました。
その他、京都の知人達も訪れてくれ、本当に嬉しいことでした。
今となれば良い思い出です。大変だった分、心に残ります。
そして、新幹線になったことで、時間にゆとりができて、帰浜する日には、10年ぶりに三千院の大根炊きへも行くこともできました。
あの冷たい空気の中、全て無事に終えた後に頂いたお大根の美味しかったこと!
奈良の生徒が同行してくれたおかげで、大根炊きも堪能できて、この度の京都滞在は楽しい充実した5日間となりました。
そして帰浜した翌日には、いけばなインターナショナル東京支部展に、本当は京都で生ける予定だった桃と白玉椿を会員と合作で生けました。
若い生徒さんなので、可愛らしい桃の花がピッタリ、こうなることになっていたのかな、と、ここでも京都のことを思い出しながら、生徒の展覧会デビューを心の中で祝いました。

今回もお仲間の先生方との時間、友人の心からの支え、そして、素敵な花材との出逢い、全てに感謝の気持ちでいっぱいになった第四回八仙花いけばな展となりました。
しばらく展覧会のお話が続くと思います。
是非皆様にもお出かけいただきだきたく存じます。
今週末出展! “第63回 いけばな協会展”のお知らせ は こちら
梶井宮御流
第二十一世家元
一松斎 藤原素朝